「夢売るふたり」

LOVE8002012-10-04


この監督の映画は必ず「誰かをダマす人」が出てくるのですけど、前作までってそのダマしがやさしさありきだった気がするのですよ。結果的に誰かは傷ついてしまうものの、その優しさに救われる人は確実にいて、ああよかったねえという気持ちが観ている側の心に残るという。

それが今回はダマす側の率直なエゴからはじまって次々と獲物を罠にかけていくため、すわピカレスクロマンに変身かと思いきや、結局ダマされる側の人たちも勝手に救われて行ってしまうという都合のよさ。ストーリーだけ追っていくと相当むちゃくちゃで感情移入できず、松たか子の自慰シーンにだけ目が行ってしまうのは必然っちゃあ必然であるわけですが、そいつはもったいない、とゆいたいです

なんかこう、認めたくない自分への甘さ、って皆あると思うんですよ。他人からやられるとスゲー嫌かも知れないことでも、自分が仕掛ける側になるとまあこれくらい大丈夫だろう、みたいな感覚。原発関連の発表する人たちまでいかなくても、公共の便所でこぼしたけどふかない、くらいのレベルで。そこをぐいぐい突き付けてくる話で、その痛みを作中で一心に引き受けるのが松たか子なんですね。アベサダはいつでも逃げられる位置にいるから気楽なんじゃないかなと思うんですね。クライマックスの子どものアレはちょっと納得がいかないと観ていて思ったのですが、そう考えるとサダヲちゃんざまあみろという感覚も生まれてくるから不思議ですよね。

ネット上の感想で「パン祭りのおねえさんがあんなに食パンをまずそうに食うなんて・・・」というのがあって笑った。確かに!そのほか脇キャストもチョイ役含め、微妙なハマっていなさがとてもよかったです。つるべさんが田中麗奈の髪を引っ張るシーンとか最高やね。そういえばエンドロールのキャストに、ヤン・イクチュンって出てびっくりしたのだけど、これって「息もできない」のヤン・イクチュン?すげえな、どこに出てたの?