「こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」

双子の姉妹デュオ、こまどり姉妹の半生を描いたドキュメント映画。内容自体は「いつみても波瀾万丈」とかでやるようなあのときはあだったたねこうだったねとドラマチックな事柄を並べていくあの感じ。一歩間違えればひと山いくらの安ドキュメントとなってしまう素材も、おふたりの肉声で語る構成にすることでうまく使われており、いちいち引っかからず見られます。出演クレジットが芸名の並木栄子・葉子ではなく、本名の長内栄子・敏子となっていることもとても印象的。

ステージでもインタビューでも、主に喋るのは妹の敏子さん(芸名は葉子さん)で、姉の栄子さんがときどきいれる突込みを入れてくれます。この突込みが、微妙にタイミングを外していたり、そのままお姉さんの話になっちゃったりして、それでも話が続くし妹さんも乗っかっていくから面白い。本当にふたりでひとりなんだなあ、と思います。おふたりともまだ結婚暦がなく独身で(お姉さんには子どもがいる)死ぬまで一緒にいると心に誓った様子は、ただ血が繋がっているとかそういうこと以上の絆で結ばれていることが伝わってきて、胸が熱くなります。こまどり姉妹なんてぜんぜん知りませんでしたが、うっかりファンになってTSUTAYAでCD借りそうになりました。なかったんだけどね。

特に心に残ったのは、故郷である北海道銭函を訪れて、食堂かどっかで喋っているとき、ふたりが窓の外の波の激しい海を見ながら、「昔はここから転覆していく船がみえたのよね。それで、海に落ちた人が助けてくれって手を上げているのが目に入ったりする」「でもね、助けになんて行けないのよ」「ただ見ているしかないの、船がどんどん流されて転覆していく様子をね」としみじみ語った場面。歌が好きだから歌ってるわけじゃない、生きるために歌っているんだという言葉も、とてつもない重みを持って伝わってきます。最近の音楽ドキュメントブーム(なのか?)では異色とされつつも、誰よりもロックなふたりの生き様は必見です。